宋慶齢基金会日中共同プロジェクト委員会(JCC)


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友好を深めあったJCC幼児教育研究交流訪中団
―宋慶齢基金会・中国福利会挙げての歓迎に、日々、感動・感激の渦―
諏訪きぬ(明星大学・団長)
 昨年9月、上海からの幼児教育訪日団を迎えるに当たって、JCCがきめ細やかな日程表を作成いたしましたが、渡された表はまさにその中国版といってよいものでした。午前・午後・夜と3段構えにピッチリ組まれた日程表は、私たちの意向をすべて網羅し、その上にさらにいくつのも訪問先を付加した濃密なものでした。
 以下簡単に、日程を追って、訪問の内容をご報告いたします。
期日 2005年3月16日~3月22日
訪問先: 上海市立幼稚園・中国福利会託児所&幼稚園・宋慶齢幼稚園他
団 員: 諏訪きぬ(団長)・岡本富郎・斉藤政子・東田幸子(秘書長)・董丹犁(以上明星大学)・木村和子・中村紀代子(以上名古屋短期大学)・高橋真由美(藤女子大学)・諏訪義英(大東文化大学名誉教授) 

3月16日3月17日3月18日3月19日3月20日3月22日

2005年3月16日(水曜日)
上海市立威海路幼稚園
 上海市立威海路幼稚園(上海学前教育実験基地参加・師範園)
 定員280名、55年の歴史を有する寄宿制幼稚園を訪問。よう(女兆)捷如園長のビデオ交えた丁寧な説明では、保育目標である健康な体・科学する頭脳・健全な人格を実現するために、さまざまな工夫を先進的に実施しているとのこと。例えば外国からの教育方法を取り入れ(モンテッソリ、レッジョ等)、モンテッソリ・英語・伝統的健康教育等のコースを親が選択できる、人格教育に一環として夜の活動にも配慮している、健康のために食育に力を注いでいると園長先生の熱弁は続き、圧倒される思いであった。寄宿制英語クラスを参観。

2005年3月17日(木曜日)
中国福利会託児所
 朝は8:15から行動を開始。少年宮訪問後、中国福利会託児所でオープンしたばかりの親子苑を見学。日本の子育て支援センターに似てはいるが、運営方法は全く異なっている。有料制で20名1クラスのクラスが二つあり、週3日1日2時間程度親子で通園するというものである。一人っ子のため子育ての仕方が分からない若い父母や孫を預かっている祖父母が子どもと一緒に通ってくる。両親でやってきて子どもと楽しげに遊ぶ姿もあった。階下には広い食事室があり、食事をしてそれぞれが帰宅する。ここでは立ち歩かず、スプーンを一人で持って食べるようになる、と陳石(石三つ重ねる)所長。親子苑を利用している二人の母親とPTA会長を勤める母親3人を交えての懇談会も用意されており、思いがけず楽しいひと時を持つことができた。親たちのニーズを受け止めて園運営をする時代という陳所長の言葉に開放改革中国の息吹を感じた。
上海市立東方幼稚園
 午後は新興地浦東地区にある上海市立東方幼稚園訪問。説明後、園内見学。師範園だけあって、陶芸家を配置した陶芸室、囲碁士が指導する囲碁ルームやコンピュータ室、ローラースケート場、温水プールなど立派な施設設備。男性教諭のスケート指導は実に巧みで、子どもの楽しげな練習風景が展開されていた。

2005年3月18日(金曜日)
宋慶齢幼稚園
 宋慶齢幼稚園は上海市の西方にバスで30分ほど行ったところにあり、門を入ると手入れの行き届いた園庭が広がり、庭園の中に幼稚園があるような趣である。封莉容園長が開園からずっと手塩にかけて作り上げてきた園という。国際部と中国部とがある多元文化教育の実情を視察する。
隈なく園内を案内していただく中で、5歳児中国部の担任をしていた余先生と図書室で再会する。訪日中に腹痛に襲われた先生で、胆石だったとのこと。目の前にいる余さんは落ち着いた教師ぶりで、もう一人の担任の先生と協力して、子ども達の合唱をプレゼントして歓迎してくれた。
科学する心は階段スペースを利用して作られた宇宙の世界に、人格教育は「ママはあなたを愛している」という愛のメッセージに、健康教育は園庭で楽しく遊ばせ、腕のよい調理師さんのおいしい食事を提供することに具現化されている。お国自慢の料理を出したり、子どもの絵をバザーで販売して寄付するなど、国際的なセンスを生かした行事も盛りたくさんという。
  中国部寄宿制5歳児クラスで持参した遊具をプレゼントすることになったが、そこで指導に当たっていた先生が奇遇にも董さんのお知り合いであった。子どもたちの歌や遊戯で大歓迎してくださったが、子どもの指導の巧みさに舌を巻いてしまった。中国では幼稚園教師が「高級教師」と「教師」に分かれているが、上海市立師範幼稚トレーニングされたその先生は、実に表情豊かで流れるような指導が印象的であった。

研究会
 午後、第1回目の研究会「保育者養成の現状と保育者のキャリア形成」を開催。国立華東師範大学閻水金教授も来園され、中国の幼児教育改革の進行状況についてお話を伺うことができた。また宋慶齢幼稚園学務主任からは教師がお互いに高めあう取り組みについて報告があり、2002年から「診断・反省」グループを作り、「差異」などのテーマで取り組みを進めているとのことであった。続いて中国福利会託児所の許先生からはどのようにキャリアアップを図ってきたか、ご自身の取り組みについて報告がなされた。中国の保育者のキャリア形成について、初めて報告を聞くことができ、訪中の目的の一つがクリアできた思いであった。

2005年3月19日(土曜日)
中国福利会国際和平婦幼保健院
 園関係はすべてお休みのため、宋慶齢女史の上海での住いであった故居を訪ね、続いて新装なった中国福利会国際和平婦幼保健院へ。舎予(これで1文字)敏院長、窯党書記、周総務主任等から「日本からの数々の支援を受けてここまで発展してきた」とパワーポイントを使用して、沿革や院の組織、母子保健に対する貢献等について説明があった。あわせてJCCへの謝意も表された。
 また新生児から一人でお湯につかることができる水泳槽にはみな目を見張ってしまった。育児教室にきた親たちがわが子を水泳槽に入れていたが、子どもたちはニコニコとご機嫌であった。スタッフの方々からは新しい施設設備と高度な技術で母子保健の中核を担おうとする自負心がびんびんと伝わってきた。

 宋慶齢児童発展センター副主任黄紅文女史との夕食、黄女史から児童発展センタの仕事内容について種々伺うことができたことは、思いもかけない収穫であった。なぜなら児童発展センタは保育者の現任研修に当たっている部署であり、私たちが関心を抱いている保育者のキャリア形成に深く関与していたからである。温和な中にも研究者としてきちっと筋を通した黄女史と旧知のように和やかで有意義な時間をもたせていただくことができた。

2005年3月21日(月曜日)
 中国福利会幼稚園を訪問。浦東地区にあり1万坪もの広大な敷地に赤い屋根の園舎が建ち並ぶ。午前中の見学のテーマを園側は「生活活動」に絞っており、健康増進のための体育遊びやプール、ローラースケート、食事の配膳と食事の様子を視察させていただいた。途中ローラースケート場で人形劇「てぶくろ」を急遽、5歳児クラスの子どもたちの前で演じてよいという許可が出た。董さんが中国語でナレーション・せりふ・説明を一手に引き受け、他の団員は人形を扱うという単純な仕組みで臨んだのだが、上海での優良教師であった董さんだけに、子どもたちとの掛け合いは絶妙で、人形劇を通して場は大いに盛り上がり、子どもたちも楽しんでくれたように思われた。ここでも董さんがお知り合いの保育者と再会する場面があり、奇遇が奇遇をよぶ旅でもあった。
  午後、第2回研究会「保育者のキャリア形成をめぐって」を開催。前半は33年のキャリアを有する謝先生から保育者の資質向上のためにどのような指導・訓練をしているかについて、福利会幼稚園の取り組みが紹介された。続いて若い保育員の先生から睡眠障害を抱えた子どもへの指導をめぐって話題提供があり、超保健医師からは夜叫・夜尿・爪噛み・指しゃぶりなど子どもの精神的・心理的問題を有する子どもが増え、親とサポートがほしいケースが多々あるが、その連携が難しいとの発言があった。問題のある子は週1回のミーティングで追跡し、5人のスタッフで話し合いをする、また夜勤の先生にも伝えていくとの補足が謝先生から行われた。4歳児クラスの先生からは「他児とうまくかかわれない男の子」を母親と連携して指導した事例が報告された。若い先生たちが要点をさっと捉えらえて適切な発言を堂々とするのには感心した。栄養士の楊さんからは健康なメニューづくりの6つの基準が披露された。
  後半は上海師範大学曹子房教授(心理学)が「一人っ子政策の今、子どもが健康に育つことが衆目の願い。実践と理論を結合させ、「子どもが生き生きできるよう、保育者のトレーニングに寄与したい」との発言があり、今後とも双方で研究交流を図ることを確認しあった。続いて上海市保健所集団保育科で幼稚園と託児所の保健指導・管理に当たっている楼(木篇とる)有世医師からは保健指導を通して如何に園のレベルアップを図っているか、また保育員のトレーニングにどう関与しているか、さらに親教育として「2+1」問題にどう対処しているか等、具体的な取り組みの状況が報告された。
私たちが出発の2週間前にファックスで依頼した研究会であったが、2回とも適切なスタッフを揃え、誠実に対応して下さったことに深謝を表したい。
24時間保育
 午後8時、24時間保育の観察に再び暗くなった福利会幼稚園にもどり、英語などの課業に取り組む子どもたちと保育者の姿を目の当たりにした。8時半ごろになると夜間勤務のスタッフが出勤。それを待つかのように子どもたちは就寝の準備をして、ベッドに潜り込む。眠りにつく子どもたちに「おやすみなさい」と声をかけて、一行は福利会幼稚園を辞した。期待以上に何と濃密な研修のときを過ごすことができたことか!というのが団員一同の深謝をこめた思いである。

2005年3月22日(火曜日)
 帰国。

今回の訪中に際して、研究交流のポイントとして
1. 上海市にあるモデル園(幼稚園、託児所)を訪問し、保育者との研究討議を通して、中国で展開されている保育・幼児教育の現状を学ぶ。
2. 寄宿制幼稚園の実際を見学し、幼児期における「寄宿制」の意義について研究交流する。
3. 中国の保育者養成の現状、求められている資質、キャリア形成の状況を調査し、わが国の保育者のキャリア形成に資する。
4. 中国福利会国際和平婦幼保健院の見学を通して、「妊娠から出産、育児」へのサポートの現状を学ぶ。
という4点を挙げましたが、それらすべての課題に即した研究交流の旅となったことを深く感謝し、今後幼児教育に関する研究交流が発展することを期待し報告といたします。

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